うさんくさい商法
ファンデーションを買うべく、意を決して駅ビルにあるコスメカウンターに行った。
今までドラッグストアで購入したカネボウコフレドールを愛用していたのだけど、くずれやすいのが気になっていた。
なくなったのをきっかけに某有名通販化粧品のものを買った、くずれにくいというふれこみのものを。しかしこれが失敗。なんとなくカバー力に乏しい。
そういえば昔一緒に仕事してたリア充女子はデパートでファンデーション買ってると言ってたな。そしていろいろ調べるとデパートで売ってる某メーカーのものの評判がよい。
他人に左右されやすい性分なもので、もうすっかり買うつもりになっていた。
転職活動中で企業説明会の帰り、服装もいつになくちゃんとしてるし、メイクもいつもよりしっかりしてる。あとはBAと呼ばれる美しい女性たちとうまく会話するだけ。
結果は、失敗に終わった。
企業説明会の帰りにあちこち歩き回り、うどんも食べたせいで汗だくだったのがよくなかったのか、コミュニケーションスキルの低さが災いしたのか、土曜の夕方という人の多い時間帯が悪かったのか、BAさんを呼び止めたがどことなく冷たいし会話も続かなかった。
「ファンデーション買いたい、合う種類と色を教えてほしい」ってことだけなのに。それすら成し遂げられない社会の屑。
仕方がないので通販のファンデーションを使い続けようと思う。
そして、ここからが本題。
ファンデーションの購入を諦めた私は駅ビルをぷらぷらしていた。
すると自然派化粧品のお店のうら若き店員に声をかけられた。
彼女は新製品のデモンストレーションをしてくれ、それがいかにすぐれた商品で、まとめ買いをするとお得かを熱弁してくれた。
私はその中の製品のうちのひとつが欲しくなった。ちょうどファンデーションを買うつもりだったお金は浮いているし、基礎化粧品で興味のあった商品と効能が似てるのも魅力的だった。
あれよあれよと巧みな話術に夢中になってしまったのだ。
しかし、買うのをやめた。最後の最後にうさんくさい痩せるというふれこみのボディオイルを紹介されたからだ。
よくわからない割引とか考える暇を与えないセールストークとか違和感はあったが、それが駄目押しだった。そんなに簡単に人間は痩せるわけない。
買おうか迷っていた商品も途端に訝しく思えた。
強引さは営業において必要なことなのかもしれない。
しかしそれが失敗の要因にもなるのだなと、自分のことながらしみじみ思ってしまった。